【焙煎手順④】焙煎中における3つのフェーズとRoRの考え方と重要性

【ドライングフェーズ/Drying Phase】

  • 開始〜蒸気が落ち着き、生臭さが消えるまで
  • 味を作るというより、成分を美味しく進化させる前駆体を作っていくイメージ

【メイラードフェーズ/Maillard Phase】

  • 150度〜1ハゼ
  • ボディ、複雑性、甘みといったバランスを決める

【デベロップメントフェーズ/Development Phase】

  • 1ハゼ〜終了
  • 時間・熱量によって焙煎豆の味わいが全て決定する。

【RoR /温度上昇率】

  • ゆっくりと減少させることが大事

焙煎はコーヒーを作る過程で重要な工程ですが、焙煎によってそのコーヒー豆が持っている以上の味は出せないので、豆の個性を最大化するためにどう焼くか、というアプローチを考えることが重要です。

ドライングフェーズ/Drying Phase

このフェーズは、焙煎の初期段階に豆から水分を除去することで、成分を美味しく進化させる前駆体を作っていくフェーズです。このフェーズで味を構成していくというよりは、しっかり水抜きをして前駆物質作るという意識が大切になってきます。

基本的に水抜きは豆投入後6〜7分で終了するとされていて、蒸気が落ち着き、生臭さが消える地点(150°〜160°)がドライングフェーズ終了の目安です。

ドライングフェーズの重要性

ドライングフェーズは、メイラードフェーズやデベロップメントフェーズに比べ軽視されがちですが、正しいドライングフェーズ無しに完璧な焙煎を行うことはできません。

Heat applied during the drying phase sets the momentum for the entire roast, and as such, achieving proper velocity through this phase is crucial to accurate and consistent roasting. In other words, though it does not itself directly modulate flavor, the length and momentum of the drying phase affect the length and momentum the phases which follow it, which in turn modulate flavor; a finely tuned drying phase is the necessary precondition of successful caramelization and development, which makes it an indispensably crucial phase of a given roast.

ドライフェーズ中における火力調節は、その後の焙煎の時間を決める重要な要素です。そのため、このフェーズで適切な熱を豆に与えることで、初めて狙った焙煎をすることができます。このフェーズ自体が直接的に風味を調節するわけではないものの、ドライフェーズの長さと勢いは、後のフェーズの長さと勢いに影響を与え、その結果、風味を調節することになります。正しいカロリーをドライフェーズで与えることは、カラメル化とフレーバーの発展に必要不可欠な前提条件であり、焙煎において重要なフェーズとなります。

Cafe Altura

スペシャルティコーヒー協会(SCA)から認定されたロースターおよびバリスタでもあるニッキ・アムーリ(Nicki Amouri)が行った実験によると、中点を74°、ドライングフェーズの時間を6分30秒にした場合が、最もバランスが良く、甘みが際立つ焙煎ができると語っています。

そして、ドライングフェーズ時に十分な熱が与えられなかったり、火力が極端に強すぎたりするとこの様な現象が起こります。

【短すぎるドライングフェーズ】

  • 苦味
  • えぐみ
  • 強すぎる味わい

【長すぎるドライングフェーズ】

  • フラットなフレーバー
  • ゴム
  • 甘さがなくなる
  • 乾いた質感

投入温度や焙煎前半の火力が高すぎると、スコーチングやティッピングといった現象(Roasting Defect)が起きます。

スコーチング:強すぎる火力により、熱が中心に伝わる前に豆の表面だけ焦げてしまう状態です。焦げたような苦味が発生します。

ティッピング:こちらも、熱が高すぎることが原因です。熱伝導率が早すぎるため、一番柔らかい先端が焦げてしまう状態です。

他のRoasting Defectについては、別の記事で詳しくまとめています。焙煎における失敗(Roasting Defects)とその対策について

逆に、投入温度や焙煎前半の火力が弱すぎるのも良くないです。原則として、熱は高い方から低い方にしか伝わりません。

例えは熱風が200℃で豆の表面温度も200℃の場合、豆の温度が上がることはないということです。

そのため、火力が低すぎて窯内温度を豆温度が追い越す状況が発生してしまうと、フレーバーの前駆体成分の転化をより積極的にするためのカロリーが足らず、こちらも、青臭さやフラットな味わいになる確率が高くなってしまうので、正しい温度で水抜きをすることが重要になってきます。

記事後半で説明しているデベロップメントフェーズの時間が適切な時間内にも関わらず、この現象が起きている場合はドライングフェーズの見直しが必要です。

そして、ドライングフェーズの長さは主に投入温度・中点によって左右されます。ではどう温度を決めていけば良いのでしょうか?

ドライングフェーズ温度の決め方

どの温度で水抜きをするのが正解なのか?という疑問が出てきますが、正解はなく豆の特徴によってアプローチを変えていく必要があります。

まずは基本的な考え方として熱伝導には以下の考え方があります。

【主な熱伝導率の特徴】

  • 同じ材料でも、結露などで水分を含むと熱伝導率は大きくなる。
  • 密度(比重)が大きい材料ほど熱伝導率は大きくなる傾向がある。
  • 同じ材料でも、高温になるほど熱伝導率は大きくなる。

このような熱伝導率の特徴を生豆に当てはめていくと、どの様なアプローチが正解なのかが見えてきます。

【投入温度を決める際の主な要素】

  • 豆の水分量
  • 豆の密度
  • 豆の大きさ
  • 精製方法
  • バッチのサイズ

豆の水分

Roaster David Wilson of Coffeebar tells me, “The more moisture in there, the more heat the bean’s going to be able to retain, the better heat transfer you’re going to have, so it can take a higher heat through the initial phase of the roast.”

Coffeebarの焙煎師であるデイビッド・ウィルソンはこのように述べています。「豆に含まれる水分が多いほど、豆はより多くの熱を保持でき、より良い熱伝達が得られることができます。そのため、水分値が多い場合には焙煎の初期段階でより高い熱を受け入れることができます。」

Perfect Daily Grind

【低い水分値の場合】

  • 水分率が低くいと中心まで熱が伝わりにくいので、強い火力だと外側だけが焦げやすくなっていまします。ドライングフェーズを長くとるために低めの火力が必要です。ダンパーを閉めて蒸すようなイメージで水分の蒸発を遅くし、内部まで熱を伝える工夫が必要になってきます。

【高い水分値の場合】

  • 水分率が高いと熱伝導率も高いので、高い火力でも耐える事ができます。また、蒸発していく水分量が多いのでダンパーを開き気味にするのが一般的です。

また水分値が高い豆の場合

  • 中点が低水分の豆よりも低めになる
  • 豆の温度上昇のレスポンスが早い
  • 豆の温度低下のレスポンスも早い

という傾向もあるので、水分の量が分からないという人は焙煎中の温度変化によって、予測することが可能です。

またThe Coffee Podcast というポッドキャストのRoasting Series: Roasting Basics Part IIでは、Scott Raoをゲストに迎えてトークをしており、そこでScott Roaは水分値の重要性について述べています。水分値が多ければ多いほど焙煎中に放出される水分も多くなる。この放出される水分はかなり高温だが豆の表面より温度は高くないため、水分が多いほど温度が下がってしまう。よって、水分値が高い場合には、より高い火力で焙煎しなければならない。

参考:E118 | Roasting Series: Roasting Basics Part II

豆の密度

Cesar Magana of Lechuza Café, El Salvador tells me that the main difference lies in the bean’s capacity to absorb heat. Hard beans, he explains, react better than softer beans and so the flavour development is better. However, they are also more resistant to heat. Soft beans, he continues to explain, have a bean structure that is less solid than hard beans. There are air pockets which slow down the inwards transfer of heat. Therefore, the surface of the bean could overheat, risking scorching, if the heat is too high. As of such, you should use a lower charge temperature (initial temperature) for soft beans.

エルサルバドルのレチューザ・カフェのセサール・マガナは、密度による主な違いは豆が熱を吸収する能力にあると述べています。彼が説明するには、硬い豆は柔らかい豆よりも熱伝導率が良く風味の発達が良いです。しかし、熱に対する抵抗力も高いのも事実です。また、柔らかい豆は硬い豆よりも固体構造が少ないです。そのため豆内部には空気が多くあり熱伝導が悪くなります。そのため、熱が高すぎると、豆の表面が過熱し、焦げるリスクがあります。そのため、柔らかい豆には低い投入温度を使用すべきです。

Perfect Daily Grind

【軟質な豆の場合(低地)】

  • 生豆の密度が低いとそのぶん熱が伝わりにくいため、表面に与えられた熱はゆっくりと中心部に伝わります。そのため、高火力だと表面だけ焦げてしまう生焼けの可能性が高まります。

【硬質な豆の場合(高地)】

  • 生豆の密度が高いとその分熱が伝わりやすいため、表面に与えられた熱は素早く全体に伝わり、均一に温まります。また、密度が高いということは豆の壁が硬いということなので、より強い火力でカロリーを与える必要があります。

豆の大きさ

The most important effect of bean size in roasting is simply that it takes longer for heat to penetrate a larger bean. This means that for a given roast profile, the measured bean temperature in larger beans will increase more slowly and the core temperature will be lower at the end of the roast.

焙煎における豆のサイズの影響は、単純に大きな豆の内部に熱が浸透するのに時間がかかることです。これは大きな豆ほど温度がより遅く上昇し、焙煎の終わりには中心部の温度が低いことを意味します。

Barista Hustle

【小さい豆の場合】

  • 生豆のサイズが小さいと、熱が全体に行き渡るまでの時間が短くなり、弱い火力でも焙煎できます。

【大きい豆の場合】

  • 生豆のサイズが大きいと、熱が全体に行き渡るまでの時間が長くなるので、強い火力が必要になります。

精製方法

As for processing, Luisa would use a charge temperature of around 365ºF/185ºC for a washed coffee. However, with a natural process, she explains that she’d opt for a lower temperature to avoid the beans burning. A natural coffee’s concentrated sugars could burn and create an ashy flavour.

精製方法に関して、ルイーザはウォッシュトプロセスには約185ºCの投入温度を使用すると述べています。しかし、ナチュラルプロセスでは、豆が焦げやすいため低温を選ぶと彼女は説明しています。ナチュラルコーヒーの濃縮された糖分が焦げて灰のような風味を生じさせる可能性があるからです。

Perfect Daily Grind

【ウォッシュトプロセス】

  • ウォッシュドプロセスでは、精製後の豆には果肉がほとんど残っていません。そのため、糖分が少なく、強火でも焦げる心配が少ないです。

【ナチュラルプロセス】

  • ナチュラルプロセスでは、果肉が豆に残った状態で精製されます。このため、糖分が豊富であり、焦がさないように注意が必要で、弱火での焙煎が推奨されます。
  • ナチュラルプロセスやハニープロセスでは、その甘さを引き立てるためにゆっくりと焙煎し、特有の香り、甘さ、ボディを際立たせることが一般的です。

また、大まかな焙煎時間は投入温度によって左右されるので、全体の焙煎時間を短くしたい場合(浅煎りを狙う場合)は高めの投入温度、長くしたい場合(深煎りを狙う)は低めの投入温度を意識すると良いでしょう。

メイラードフェーズ/Maillard Phase

メイラードフェーズは、前段階のドライングフェーズで水分の結合が外れた前駆体の還元糖とアミノ酸が加熱により褐色物質の「メラノイジン」などができる反応です。これによりボディ、複雑性、甘みといった要素を生み出します。

温度でいうと一般的には150度あたりからメイラードフェーズが始まります。反応自体は100度をすぎたあたりから始まっていますが、ショ糖のメイラード反応が最も活発になる温度が150度付近となっているので、このような解釈が一般的です。そして、1ハゼの始まりが、メイラードフェーズの終了です。

メイラードフェーズの重要性

このフェーズでは様々な化学反応が起こるため、コーヒーの風味、バランス決める重要な段階です。

Maillard Reactions & Flavour – Shorter times in the Maillard can result in more clarity, the perception of a lighter texture, and less complex sugar browning tones while longer times spent in this stage can allow for more chemical reactions to occur promoting more complex sugar browning tones as well as a heavier body and texture.

メイラードフェーズの時間が短いと、よりクリアな味わい・軽い質感、そして単調な風味を引き出す事ができます。一方、この段階で長い時間をかけると、より多くの化学反応が促進され、より複雑な風味や、より重いボディと質感を得る事ができます。

Detour Coffee Roasters

そして、このフェーズにかける時間により、豆のどの様な個性を活かすかを決める事ができます。

【短時間のメイラードフェーズ】

  • 軽めのマウスフィール
  • アシディティの強調
  • クリーンなカップ
  • フレーバーを引き出す
  • 豆内部未発達のリスク

【長時間のメイラードフェーズ】

  • 重めのマウスフィール
  • 控えめなアシディティ
  • 複雑性のあるカップ
  • スイートネスの向上
  • ベイクドフレーバーのリスク
  • フラットな風味

ニッキーの実験では、「アシディティ」や「軽さ」を好む人は3分のメイラードフェーズを、「コク」が好きでアシディティを好まない人は5分のメイラードフェーズを選ぶ傾向が見られました。中間の4分は、最もバランスの取れた複雑な味わいのカップになっています。

メイラードフェーズが長いと甘みが増しますが、その分ほかの風味が失われるため、味わいが薄くなってしまうことがあります。過度に長いメイラードフェーズには注意が必要です。

さらに、甘さを引き立たせるためにメイラードフェーズを延長しすることは、焙煎全体の時間に影響を及ぼすことも念頭に置かなければなりません。

Extending the Maillard phase necessarily means lowering and flattening the ROR, reaching first crack at a lower ROR, and increasing the risk of an ROR crash. There is no way to change just one variable in roasting— every change creates a chain reaction.

メイラードフェーズを延長するということは、必然的にROR(温度上昇率)を減少させ、より遅い時間で1ハゼに到達することを意味します。これは、RORクラッシュ(RoRの急激な低下)のリスクを増加させることを意味します。焙煎において、たった一つの変数を変更する方法はありません—すべての変更は連鎖反応を生み出してしまうのです。

SCOTT RAO

このように、コーヒーコンサルタントとして有名なScott Rao氏が指摘しているように、焙煎プロセスの一部を調整することは、焙煎全体に影響を及ぼすということを考えながら焙煎する必要があります。Scott Rao氏の本”Coffee Roasting:Best Practice”で述べているとうり、緩やかに減少しているRORを実現することが、最もカップに良い影響を与えます。

デベロップメントフェーズ

このフェーズでは様々な化学成分が分解、生成、結合などを凄まじいスピードで繰り返し、フレーバー形成、アロマの増加、苦味を発生させる段階です。

デベロップメントフェーズの重要性

このフェーズは焙煎における最後のフェーズであり、このフェーズににかける時間・熱量によって焙煎豆の味わいが全て決定します。1ハゼ後から排出までの、豆が一番熱による影響を受けやすく脆い状態なので、最も慎重な温度調節が必要な段階です。少し火力調節のタイミングを間違えるだけで、豆が物凄く大きな影響を受ける段階です。

【短時間のデベロップメントフェーズ】

  • アシディティの明確化
  • クリーン
  • フレーバーの向上
  • マウスフィールライト
  • スイートネスの低下
  • ビターネスの低下
  • 鋭い酸味・苦味のリスク
  • オーバーデベロップメントのリスク

【長時間のデベロップメントフェーズ】

  • マウスフィールヘビー
  • スイートネス向上
  • ビターネスの向上
  • アシディティの低下
  • ベイクドフレーバー・ローストフレーバーのリスク
  • アンダーデベロップメントのリスク

1ハゼにより水分が放出され、豆が熱による影響をさらに受けやすくなるので、慎重な温度調節が必要になります。一般的にこの時間が短いと酸味やフレーバーが優位になり、長くとると酸味が消え、ボディ感が増します。

焙煎時間のうちこの段階が占める割合は「DTR(Development Time Ratio)」と呼ばれ、コーヒーコンサルタントのScott Rao氏によると、1ハゼ後の開発時間は焙煎全体の約20~25%が理想的とされています。しかし、この割合は一概に固定されているわけではなく、例えばWCRC2019年の優勝者はDTRが10%だったことからも、数字にとらわれすぎないことが重要です。

DTR(Development Time Ratio)

  • 10~15% 酸味・フレーバーが優位
  • 15~20% 酸味・フレーバー・コクのバランス
  • 20%~  コク・ボディ感・苦味が優位

※ベイクドフレーバー:フラットになりフレーバーが微かにしかない状態

ニッキーによると、アシディティを強調したい場合は1分、スウィートネスやジューシーさを引き立てたい場合は2分のデベロップメントタイムを選ぶことが多いと述べています。このことから、シングルオリジンには1分30秒、ブレンドコーヒー(特にエスプレッソブレンド)には2分が理想的だとしています。

また、豆を排出するまで時間の見極めも大事ですが、RoR(温度上昇率)をもっとも注意深く観察していなければいけない時間でもあります。火力が極端に強すぎると、鋭い苦味や酸味といったOverdevelopementのリスクが高まります。逆に、火力が足りないとベイクドフレーバー・ローストフレーバーといった、Underdevelopementのリスクが高まってしまいます。

RoR(温度上昇率)

RoRはRate Of Riseの略で、温度の上昇率を指します。焙煎中において、釜内でコーヒー豆の温度が1分間(または30秒間)にどれだけ変化するかを示す数値です。

※RoRの温度は高いほど焙煎が早く進行していることを示し、 低い時は焙煎がゆっくり進んでいます。

コーヒーコンサルタントのScott RaoはRoRを緩やかに減少させることが何よりも重要と述べています。RoRに乱れが起こることで味が薄っぺらくなったり、ロースト臭が強くなる結果が出ています。

RoRの重要性

【低いRoR】

  • スウィートネスの強調

【高いRoR】

  • アシディティの強調

【急降下(クラッシュ)】

  • ベイクドフレーバーのリスク

【急上昇(ライズ)】

  • スウィートネスに欠けたコーヒー

With RoR, there are certain “rules” which are good to follow. Most notably, Scott Rao makes the case for a steadily decreasing one. While stalling will create baked flavours, an increasing RoR – especially after first crack – can lead to a coffee that lacks sweetness.

RoRには、大まかな「ルール」があります。特にスコット・ラオは、着実に減少するRoRの重要性を説いています。0に近い位置でRoRをキープすることはベイクドフレーバー(フラットな味わい)を生み出す一方で、RoRが上昇すると(特にファーストクラック後)甘みが欠けたコーヒーになる可能性があります。

Perfect Daily Grind

焙煎を安定させるには、ゆっくりと減少する状況を作る事です。

その中で最も避けなければいけない状況が「RoRの急降下」です。

RoRが急低下してしまい、上昇温度が±0に近づくにつれ、豆にカロリーが与えずらくなり、化学反応が起きずらくなります。この状況は通常RoRクラッシュと呼ばれ、その結果、フラットになり味が僅かにしかないベイクドフレーバーになってしまいます。コーヒーの風味が消えてしまうわけですので、クラッシュはRoRの中で最も回避しなければいけない現象です。

とはいえ、RoRの急上昇が良いというわけでもなく、豆が焦げたり、スウィートネスに欠けたコーヒーができてしまうので注意が必要です。この現象は通常RoRライズと呼ばれています。

RoR急降下・急上昇の回避方法

では、どうやってRoRの急上昇・急降下を避ければよいのか?という疑問が生まれてくると思います。

通常、セオリー通り徐々に温度を下げていれば1ハゼまではクラッシュやライズはあまり起きません。1ハゼ前後に豆内の温度が急激に変わることで起こります。

【急上昇(ライズ)】

  • この現象は、1ハゼ直前に逃げ場のない豆内の水分やガスが急激に熱せられて、豆内の温度が急激に上がることで起こります。

【急降下(クラッシュ)】

  • この現象は、1ハゼ直後に放出された水分やガスにより釜内の温度が下がることによって起こります。

1ハゼ直前にRoRは上がりやすく、直後には下がりやすいということを覚えて火力調節することで緩やかなRoRを作り出すことができます。

1ハゼ直前にRoRが上がったからといって焦って火力を下げてしまうと、1ハゼ後クラッシュが起こる確率が高くなってしまいます。