【初心者用】コーヒー焙煎の基礎とやり方を解説!時間や温度で味を調節する方法とは
焙煎はコーヒーの深い味わいと香りを引き出す、重要なステップの一つです。焙煎は単にコーヒー豆を熱するだけではなく、適切な時間と温度調節、そしてコーヒー豆を注意深く観察することが大切です。そこでこの記事では、コーヒー焙煎の基本を初心者向けに、わかりやすく8段階の焙煎レベル、焙煎の基本的なやり方と手順、熱によるコーヒー豆の変化、温度と火力の調節方法、そして焙煎時間の長さの影響について解説します。これらのポイントをマスターすることで、理想の味を作り出す技術を身につけることができます。
目次
焙煎とは
生の状態のコーヒー豆は淡緑色で、そのままではコーヒーを作ることは出来ません。しかし、焙煎によってコーヒー特有の香ばしい香りや適度な苦味、さわやかな酸味を帯びるようになります。
サードウェーブコーヒー文化の隆盛に伴い、焙煎技術への関心も高まっている中、全世界で開催されるロースティングコンペティションや、個性豊かなコーヒーを提供するロースタリー(焙煎所)の存在は、「いかにしてコーヒー豆のポテンシャルを最大限に引き出すか」という焙煎の技術に対する熱い視線を示しています。焙煎は、コーヒー豆一粒一粒に秘められた可能性を引き出し、私たちのカップに最高の一杯をもたらす、不可欠な工程なのです。
そんな焙煎を自宅で挑戦や練習したい方には、こちらの記事でおすすめの焙煎機を紹介しています。【最新版】自宅におすすめ家庭用焙煎機!人気ホームロースターの特徴と選び方
コーヒー豆の焙煎度合い
焙煎度合いで、大まかな風味のバランスが決まります。
そして焙煎レベルはこのように「8段階」に分けることができます。
浅煎り | ライトロースト シナモンロースト | (1ハゼスタート) (1ハゼのピーク) |
中煎り | ミディアムロースト ハイロースト | (1ハゼと2ハゼの間) (1ハゼと2ハゼの間後半) |
中深煎り | シティロースト フルシティロースト | (2ハゼスタート) (2ハゼピーク) |
深煎り | フレンチロースト イタリアンロースト | (2ハゼ終了) (2ハゼ後) |
そして、この焙煎度合いは豆の表面の『色』(=目の判断)だけでなく、『目(視覚)・鼻(嗅覚)・耳(聴覚)』で、その豆の最適な焙煎度合いを探っていきます。一般的には「ミディアムロースト」が焙煎の中間地点と言われており、酸味苦味のバランスが一番良い焙煎度合いとなります。
- 【浅煎り】になるほど
- 焙煎時間は短くなる
- 色は明くなる
- 匂いはくるみの様な香り
- 酸味・フレーバーが際立つ
- 【深煎り】になるほど
- 焙煎時間は長くなる
- 色は暗くなる
- 匂いは香ばしくなる
- 甘さ・質感が強くなる
まずは、焙煎度合いごとの特徴を覚えましょう。自分が焙煎した豆と照らし合わせて【酸味・フレーバー】がもっと欲しい場合には焙煎時間を短くし、【甘さ・質感】を増やしたい場合には焙煎時間を長くしてみましょう。
焙煎度については、こちらのページでさらに詳しく解説しています。【8種類】コーヒー豆の焙煎度(ロースト)の違いや特徴を解説
焙煎の工程
基本となる大まかな流れは、以下の「4つの工程」に分けることができます。
- 生豆投入
- 1ハゼ(ファーストクラック)
- 2ハゼ(セカンドクラック)
- 冷却
生豆投入
【生豆投入のポイント】
- 毎回同じ温度で豆を投入することで、再現性の高い焙煎を可能にします。
- 投入時の温度により全体の焙煎時間が変わり味を調節できる
- 低い投入温度:「酸味」「フレーバー」が際立つ
- 高い投入温度:「質感」「甘さ」が強くなる
投入時の温度を毎回一緒にすることで、毎回同じ焙煎ができるようになります。このように、温度や時間などを記録することにより、味の調節もしやすくなります。また、投入時の温度が低ければ全体の時間は長くなるため「質感」「甘さ」が強くなる傾向に。逆に、温度が高すぎる場合には、全体の時間が短くなるため「酸味」「フレーバー」が際立ちます。
世界最大級のコーヒーコミュニティ「バリスタハッスル」によると、投入温度を決める際には、狙っている豆の排出温度と同じ、あるいは10度低い温度で試してみるのが良いと述べています。もし210度で排出する場合は200〜210度の間で試してみるのが良いということ。もちろん、この絶対にこの間でなければいけないということはないので色々試してみて美味しいコーヒーが出来る温度を探してみましょう。
さらに詳しい投入温度や量の決め方はこちら
1ハゼ(ファーストクラック)
豆を投入後一番分かりやすい現象が1ハゼです。ハゼとは生豆の内部で発生した蒸気や二酸化炭素などのガスが、豆を膨張させ耐えられなくなるとパチッパチッと音をたてて爆ぜること。
【1ハゼのポイント】
- 焙煎の進行度合いを音で確認することができる
- 1ハゼが起こるまでの時間により味を調節できる
- 短時間:「酸」「フレーバー」が際立つ
- 長時間:「質感」「甘さ」が強くなる
1ハゼはシナモンローストあたりで発生し、1ハゼ発生で止めるとシナモンロースト。1ハゼが終わるタイミングで止めるとミディアムローストを目安とする焙煎度合いに仕上がります。1ハゼの最も顕著な特徴は、「バチバチ」という音です。この音が、コーヒー豆の内部で起こる大きな変化の始まりを告げる瞬間であり、焙煎士にとっては豆の状態を判断するための重要なサインです。
1ハゼ後は豆の組織がかなり脆くなっているので、火力を下げることが一般的です。
2ハゼ(セカンドクラック)
【2ハゼのポイント】
- 焙煎の進行度合いを音で確認することができる
- 1ハゼから2ハゼが起こるまでの時間により味を調節できる
- 短時間:「酸」「フレーバー」が際立つ
- 長時間:「質感」「甘さ」が強くなる
焙煎プロセスが進行し、「2ハゼ」の段階に達すると、コーヒー豆は風味の転換点を迎えます。この段階では、コーヒー豆の味わいが、酸味が支配的なものから、苦味が際立つ「深煎り」へと変化します。2ハゼは、コーヒー豆に更なる深い風味を加える重要なプロセスであり、焙煎度合いを細かく調節することで、豆の潜在的な特性を最大限に引き出すことができます。
具体的には、2ハゼが発生するタイミングで焙煎を止めると「フルシティロースト」が得られます。この段階では、コーヒー豆は豊かな苦味とバランスの取れた酸味を持ち、深みのある風味が特徴です。さらに、2ハゼが終わるタイミングで焙煎を終えると、「フレンチロースト」になります。フレンチローストは、さらに強い苦味と力強い味わいが特徴で、深煎りの中でも特に重厚な風味を楽しむことができます。そして、2ハゼが終了した後も焙煎を続けると、「イタリアンロースト」となります。イタリアンローストは、最も深い焙煎度合いを表し、強烈な苦味と独特のローストフレーバーが特徴です。
このように、2ハゼの段階はコーヒー焙煎において重要なマイルストーンであり、焙煎士はこの段階を精密にコントロールすることで、求める風味プロファイルを実現します。2ハゼの微妙な変化を理解し、焙煎のタイミングを正確に判断することが、高品質なコーヒーを生み出すための鍵となるのです。
焙煎のポイントと詳しい工程はこちらで紹介しています。【焙煎手順】コーヒー焙煎のポイントと工程を詳しく解説
冷却
【冷却のポイント】
- 焙煎後の豆を急速冷却することにより、香り成分の散逸を防ぎ、「良い香りや風味」を残すことができる
- 焙煎後の豆を急速冷却することに余熱による「焙煎の進行」を防ぐ
焙煎が完了したコーヒー豆は、その後の冷却プロセスによって最終的な品質が大きく左右されます。焙煎終了直後のコーヒー豆は、内部に高い熱を持っており、適切に速やかに冷却されない場合、豆が保持している熱によりさらに焙煎が自然に進行し続け、予期せぬ焙煎度合いになってしまう可能性があります。このため、焙煎直後には迅速かつ効果的な冷却プロセスが不可欠です。
特に、冷却機能がない手動の焙煎器やフライパンを使用する場合、ドライヤーの冷風や扇風機などを用いて強制的に冷却する必要があります。このプロセスでは、コーヒー豆から脱落する「チャフ」と呼ばれる薄皮に注意しながら、豆を均一に冷却することが求められます。
正確な焙煎度合いを維持するためには、焙煎終了後のコーヒー豆を短時間で効率的に冷却することが極めて重要です。豆の中にこもった熱が放熱されるまでしっかりと冷却することで、焙煎士の意図した風味と香りを保持し、コーヒーの品質を最高の状態で保つことができます。焙煎の技術だけでなく、適切な冷却プロセスもまた、美味しいコーヒーを作るための重要なステップとなるのです。
カッピング
焙煎後はカッピングと言われる豆のチェックをしましょう。これをすることで、次の焙煎に何が必要かを見つけることができます。
焙煎における焙煎豆の失敗例も合わせて読んで見てください。焙煎における失敗(Roasting Defects)とその対策について
焙煎時間と温度の影響
豆の味は、焙煎中の温度上昇や時間によっても影響が出ます。焙煎方法は温度と時間によって、ざっくりと2つに分けられます。
- 高温短時間焙煎
- 低温長時間焙煎
高温短時間焙煎
時間の目安:浅煎り11分、中煎り12分、深煎り13分
- 【メリット】
- 酸味、フレーバー、香りが強い
- 【デメリット】
- ムラが出やすい
- 味が濁りやすい
強い火力による急激な温度上昇が、高温短時間焙煎の特徴です。焙煎の後半(2ハゼあたり)では、豆の成分進化を適切に管理するため、火力を抑えて温度の上昇ペースを落とします。
高温短時間焙煎の最大の利点は、生豆の水分を一気に抜き去り、コーヒー豆の風味特性を素晴らしく引き出すことです。これは、多くのロースターが試行錯誤を重ねて作り上げた焙煎ノウハウの結晶です。焙煎が短いことによって、成分があまり飛ばずに風味や香りが強く残ります。しかし、この方法には一つの欠点があります。それは、アフターやマウスフィールに雑味が生じる可能性があることです。風味特性を強調するほど、雑味が増す一方で、雑味を抑えようとすると風味特性が損なわれるというジレンマが存在します。
低温長時間焙煎
時間の目安:浅煎り12分、中煎り13分、深煎り15分
- 【メリット】
- 苦味、甘み、質感が際立つ
- 味がクリアでクリーン
- ムラが出にくい
- 【デメリット】
- 風味、香りが弱い
- 豆の個性が消えやすい
低温短時間焙煎は、コーヒー豆から水分をゆっくり抜き取り、繊細な風味を保ちながら焙煎する手法です。この焙煎法は、アフターやマウスフィールの質を向上させ、滑らかでバランスの取れたカップを提供する一方で、いくつかの課題も抱えています。
低温での焙煎は、釜の内部温度や豆の表面温度を比較的低く保つため、コーヒー豆の成分進化が遅れがちです。これにより、豆の潜在的な風味が十分に引き出されず、結果的に風味特性に欠け、印象が薄いカップになる可能性があります。また、低温短時間焙煎では、前半の焙煎時間が長引く傾向があります。これにより、全体的な焙煎時間が長くなり、コーヒー豆の明るさや爽やかさが失われる恐れがあります。これは、スペシャルティコーヒーが持つ生き生きとした特徴を損なう原因となります。
おすすめの焙煎方法
コーヒー豆の焙煎は、その時々の生豆の特性や焙煎機の性能、そして何よりも焙煎師の好みや目指す風味によって異なるため、「絶対的な正解」というものは存在しません。しかし、焙煎の世界に新しく足を踏み入れる方々にとって、この多様性はときに圧倒的なものになり得ます。そこで、焙煎界で広く認知され、多くのロースターに影響を与えてきた
- ジョージ・ハウェル(GW式)
- ポール・ソンガー式(PS式)
という二つの焙煎スタイルを基に、ロースティングプロファイルを決めていくことをおすすめします。
PS式(高温短時間焙煎)
Cup of Excellenceのヘッドジャッジであり、カッピングのプロトコルを科学的に設計したPaul Songer氏の焙煎アプローチ、PS式は、スペシャルティコーヒー焙煎の世界で高く評価されています。PS式焙煎は、序盤から高カロリーを適用することにより、生豆外皮の繊維を効率的に崩壊させ、コーヒーの質感(Mouthfeel)を強化することに重点を置いています。
PS式焙煎の特徴と焙煎プロセス
- 高温での予熱
- 高温状態で始めることにより豆表面の粒子化を促進し、マウスフィール(質感)の向上を図る。ボトム(中点)約110°あたりを目指す。
- 豆投入直後の火力
- 豆投入後は火力を最小にして最後まで、焙煎を進める。
- Gold Point
- 約4~5分で黄金色の段階に到達させる。基本的に弱火を維持するが、火力調整をしながらGold Pointの時間を合わせる。進行が遅い場合には火力を上げていく。
- 1ハゼ
- 7~8分で1ハゼスタート。Gold Pointに入った時間帯を考慮しながら火力調整を行う。
- 焙煎の完成
- 約11~12分でミディアムロースト(フルフレーバー)で焙煎完了。深煎りにする場合は火力を調整して13分で2ハゼ開始を目指す。
PS式焙煎の味わいと特徴
PS式で焙煎されたコーヒーは、酸味が際立ち、質感は比較的軽いものとなります。その一方で、甘さは控えめな印象を与えます。
この焙煎方法は、コーヒー豆の潜在的な風味を引き出し、独特の味わいプロファイルを生み出すことに特化しています。PS式はスペシャルティコーヒーの豊かな風味を最大限に引き出すための科学的かつ緻密な焙煎方法として評価されており、コーヒーの質感や風味のバランスを精密に調整し、コーヒー愛好家に独特で記憶に残る味わいを提供します。PS式焙煎の細かなプロセスとその独特の味わいは、スペシャルティコーヒー業界での革新と進化を象徴するものであり、その技術と知識は、コーヒーの品質向上に貢献し続けています。
GW式(低温長時間焙煎)
George Howell氏は、Cup of Excellenceの創始者であり、近代高品質コーヒー界における重要人物です。彼の焙煎アプローチ、通称「GW式」は、生豆の外皮の早急な角質化を防ぐことに焦点を当てた独特な手法です。GW式焙煎は、コーヒー豆の自然な甘さと質感を最大限に引き出すための精緻な温度管理を特徴としています。
GW式焙煎の基本原則とプロセス
- 低温での予熱
- 投入温度が高いと豆の表面が固まり、水抜きができなくなります。そのため、ボトム(焙煎開始時の釜内温度)を100℃以下、理想は80~100℃に保つことが推奨されています。
- 水抜き
- 8~9分程度を目安に、水抜きを終了できるような柔らかい火加減にすることで、水抜きをしっかり行う。豆は茶褐色で香りはカラッとした乾いた印象になるところまで。この時間が短いと生焼けになり、質感も減少してしまい、反対に長すぎるとフレーバー成分が飛んでしまいます。
- 1ハゼ
- 水抜き終了後、火力を上げて1分30秒以内に1ハゼに入るように調節する。水抜きの後から1ハゼまでの時間が短すぎると表面が焦げてします。また長いときちんとした1ハゼが起こらず、フレーバーが熟成しません。
- 1ハゼ後の火力調整
- 1ハゼが始まったら火力を下げ、豆の香りが落ち着いたら焙煎を終了します。GW式では、1ハゼ直後の炭酸ガス発生に注意を払い、豆の中に火が十分に入ったサインとして、青臭い香りがなくなるのを確認したら終了です。
GW式焙煎の味わいと特徴
GW式で焙煎されたコーヒーは、甘さが際立ち、質感は重厚になります。
この焙煎法は、生豆表面の凝結を防ぎ、繊維の崩壊を促進することで、豊かな質感を生み出します。途中からのカロリーの上昇により、酸の形成は控えめで、全体的にがっしりとした味わいになります。GW式焙煎は、特に上品で酸が明るいウオッシュドコーヒーに適しており、甘さと質感を強化し、印象深いカップを生み出すことができます。
GW式焙煎は、焙煎技術の細かい調整が求められる高度な手法ですが、その結果は非常に印象的な味わいとなり、コーヒー愛好家や専門家の間で高い評価を受けています。この焙煎スタイルを採用することで、コーヒー豆の真のポテンシャルを引き出し、記憶に残る豊かな風味と質感を持つカップを提供することができます。