「冬」と「夏」における焙煎アプローチの違いを「Roast Magazine」から学ぶ

参考:Exploring the Roasting Curve: Part 2 | Nicki Amouri

Roast MagazineのYouTubeチャンネルで、冬と夏の気温差がコーヒーの味に与える影響について、ニッキ・アムーリ(Nicki Amouri)が説明した内容をまとめました。彼女は、バージニア州ビエナにあるカフェ・アモーリのローストマスターとして知られており、コーヒー業界の著名な人物です。また、アラビカQグレーダーの資格を持ち、スペシャルティコーヒー協会(SCA)から認定されたロースターおよびバリスタでもあります。

Roast Magazineは、スペシャルティコーヒー業界に特化したアメリカの雑誌で、2004年に創刊されました。コーヒーの焙煎、生豆の品質管理、持続可能性、技術革新などに関する情報を、焙煎業者や業界のプロフェッショナルに提供しています。毎号では、最新の焙煎技術や機器のレビュー、焙煎業者へのインタビュー、業界のトレンドに関する記事が掲載されており、業界関係者から高く評価されています。また、Roaster of the Year(年間優秀ロースター賞)という権威ある賞を主催し、優れたコーヒーロースターを表彰しています。

ニッキ・アムーリがこの実験を行った理由として、ロースターは焙煎したコーヒーが美味しいかどうかに関わらず「なぜその結果になったのか」を知る必要があるからだと説明しています。焙煎プロファイルによってなぜ特定の風味が生まれるのか、各フェーズや要素がカップにどのように影響しているのかがわからなければ、焙煎の改善や再現が難しいと彼女は述べています。この実験から学ぶことで、焙煎の分析が可能になり、改善すべき点が明確になるとともに、理想とする焙煎を実現できるようになるのです。

彼女は、焙煎結果について次の3つのポイントを常に考えることが大切だと強調しています。

  • なぜこのような焙煎結果になったのか
  • どのような風味になるのか
  • 改善方法

焙煎時間が短い場合(夏)

目標のプロファイル結果
・76.6°(ボトム)
・18.3°(RORの頂点)
・6:30(メイラードフェーズ開始)
・9:30(1ハゼ)
・10:45, 213.8°(焙煎終了)
・82.2°(ボトム)
・19.4°(RORの頂点)
・6:00(メイラードフェーズ開始)
・8:45(1ハゼ)
・9:45, 213.8°(焙煎終了)

考えられる原因

  • グリーンビーン、または部屋の温度が高い
  • 投入量が少ない
  • 豆の水分値が低い
  • 豆の密度が低い
  • とても汚れている、または掃除したばかりの焙煎機
  • 弱いエアーフロー

味の特徴

  • ブライト、アシディック
  • スウィートアシディティ
  • 軽いボディ
  • 心地の良いアフターテイスト
  • アシディ、スウィートネスを主に感じる。ボディはまとまっているけれど、味に奥行きと複雑性に欠ける。

改善方法

改善方法味の変化
焙煎初期段階の温度を下げる
・投入温度を下げる
・火力設定を低くする
・投入量を増やす
穏やか、優しい、丸みのある、ジューシー、バランスが良くなる
焙煎中期段階を長くする(メイラードフェーズ)
・火力を下げる
・ドライングフェーズ終了時のRORを低くする
ボディ、マウスフィール、複雑性の上昇
デベロップメントタイムを伸ばす
・火力を下げる
・1ハゼ開始時のRORを低くする
明るい酸の減少、アフターテイストの向上、バランスが良くなる

焙煎時間が長い場合(冬)

目標のプロファイル結果
・76.6°(ボトム)
・18.3°(RORの頂点)
・6:30(メイラードフェーズ開始)
・9:30(1ハゼ)
・10:45, 213.8°(焙煎終了)
・65.5°(ボトム)
・16.7°(RORの頂点)
・7:30(メイラードフェーズ開始)
・10:45(1ハゼ)
・12:15, 213.8°(焙煎終了)

考えられる原因

  • グリーンビーン、または部屋の温度が低い
  • 投入量が多い
  • 豆の水分値が高い
  • 豆の密度が高い
  • 適度に汚れている、または綺麗な焙煎機
  • 強いエアーフロー

味の特徴

  • ビターなアシディティ
  • スウィートネスに欠ける
  • ミディアムボディ
  • 心地良くない、紙のようなアフターテイスト
  • 素晴らしいアシディティとボディだが、スウィートネスに欠ける。特にアフターテイストのスウィートネス。

改善方法

改善方法味の変化
焙煎初期段階の温度を上げる
・投入温度を上げる
・火力設定を高くする
・投入量を減らす
スウィートアシディティ、フレイバーを強く感じる、まとまったフレーバー
焙煎中期段階は同じ長さを維持する(メイラードフェーズ)ボディ、マウスフィール、複雑性をキープするため
デベロップメントタイムを短くする
・火力を上げる
・1ハゼ開始時のRORを高くする
明るいアシディティ、フレーバーが際立つ

メイラードフェーズが長い場合

考えられる原因

  • ドライングフェーズ終了時の火力が足りない
  • 火力の下げすぎ
  • 強すぎるエアーフロー

味の特徴

  • 適度なアシディティ
  • 薄い、水っぽい、空洞なボディ
  • 適度なスウィートネス
  • はっきりしないアフターテイスト
  • 特徴が少なく、つまらないコーヒー。ボディが特に薄い、弱い、フラットになる。

改善方法

改善方法味の変化
ドライングフェーズは同じ長さを維持するスウィートネス、フレイバーを十分に発達させるため
焙煎中期段階を短くする(メイラードフェーズ)
・火力を上げる
・ドライングフェーズ終了時のRORを高くする
重く強いボディ、十分なマウスフィール、濃縮されたフレーバー
デベロップメントタイムを短くする
・火力を上げる
・1ハゼ開始時のRORを高くする
明るいアシディティ、フレーバーが際立つ

デベロップメントが長い場合

考えられる原因

  • 1ハゼ開始時のの火力が足りない
  • 火力の下げすぎ
  • 強すぎるエアーフロー

味の特徴

  • 少ないアシディティ
  • 適度、またはフルボディ
  • 少ない、または適度なスウィートネス
  • 心地良くないアフターテイスト
  • 最低限のアシディティだが、しっかりした味わいのコーヒー。特質的な味わいはない。

改善方法

改善方法味の変化
ドライングフェーズは同じ長さを維持するスウィートネス、フレイバーを十分に発達させるため
焙煎中期段階は同じ長さを維持する(メイラードフェーズ)ボディ、マウスフィール、複雑性をキープするため
デベロップメントタイムを短くする
・火力を上げる
・1ハゼ開始時のRORを高くする
明るいアシディティ、フレーバーが際立つ