コーヒーカップの【形•素材•色】で変わる【味と匂い】の違い
家でコーヒーを楽しむ時、産地や抽出方法を気にする方は多いと思います。しかし、コーヒーカップの形状や色によって多少ながらも感じる味わいが変わることをみなさんご存知でしょうか?カップの幅や長さ、素材によっても風味の感じ方が大きく変わります。
自宅だからこそ選べるカップ。家でゆったりとした時間と共に楽しむ最高のコーヒーをカップ選びをしてみませんか?
〜コーヒーカップの【形•素材•色】で変わる【味と匂い】のまとめ〜
カップの特徴 | 風味への影響 |
---|---|
飲み口の広がり | 飲み口が広がっているカップ→「酸味」と「甘み」が強調される。 飲み口が狭まっているカップ→「苦味」と「香り」が強調される |
カップの厚み | 厚いカップ→「苦味」「重い口当たり」「単調な味」が強調される。 薄いカップ→「酸味」「軽い口当たり」「複雑な味」が強調される。 |
カップの素材 | ザラザラしているカップ→「苦味」が強調される。 ツルツルしているカップ→「甘さ」が強調される。 |
カップの色 | コーヒーとカップの色の「コントラストが強い」 →全体的な風味を「強く」感じる。 コーヒーとカップの色の「コントラストが弱い」 →全体的な風味を「弱く」感じる。 カップの色が「暗い」 →風味と香りが「強く」感じる。 カップの色が「明るい」 →風味と香りが「弱く」感じる。 |
目次
飲み口の「広がり方」で変わる味わい
飲み口の広がり方が変わると「苦味/酸味」「香り/甘み」が変わってきます。
飲み口が「広く」なっている | 「酸味」と「甘み」が強調される |
飲み口が「狭く」なっている | 「苦味」と「香り」が強調される |
飲み口の広がり方で味が変わる理由は主に2つ。
- 口の中での滞留時間が変わる
- 飲み口が狭くなっているカップ→舌の中心を通るため、どっしりとした苦味
- 飲み口が広くなっているカップ→口全体に広がるため、優しい酸味
- コーヒーが空気に触れる面積によって変わる
- 飲み口が狭くなっているカップ→空気に触れる面積が少ないため、香り高くなる
- 飲み口が広くなっているカップ→空気に触れる面積が多く酸化が早いため、甘くなる
主にこのような理由で感じる味わいが大きく変わってきます。
飲み口の形と舌の関係
飲み口の形状が変わることで、口の中での滞留時間が変わり味の感じ方が大きく変化します。
- 縁が狭くなっているカップ→舌の中心を通るため、どっしりとした苦味
- 縁が広くなっているカップ→口全体に広がるため、優しい酸味
カップの形状によって、カップを傾けた時に口へと流れ込む量や位置、広がり方、速さが変わってきます。この違いによって、コーヒーのもつ複雑な果実味や酸味などの感じ方も変化し、全く同じコーヒーでも、違うカップで飲むと別のコーヒーのように感じられることさえあります。 特にカップの形状によって、コーヒーが舌のどの位置に触れるかによって、苦味や酸味、甘味といった味覚に与える影響は大きく、カップの形でコーヒーの味が変わる大きな要因となります。
飲み口が狭くすぼまった形状のカップは、多少傾けただけではコーヒーは口に入ってきません。自然と顔を上に傾ける格好になるために、コーヒーが舌の中心を速いスピードで流れていきます。これにより、舌の両脇の酸味を強く感じる位置に先に接触させずに、コーヒーの果実味を先に感じながら、その後心地良い酸味とミネラル感を、余韻にかけて楽しむことができます。 逆に飲み口が広いカップの場合、コーヒーは口の中に入れた瞬間から、舌全体に広がるため、柔らかな酸味を持つコーヒーの味わいを、バランス良く楽しむことができるのです。
最近の研究では、味覚は匂いが95%、舌で感知するのはわずか5%ということが分かっています。 つまりコーヒーの場合も、舌で感じる味わいはわずか5%しかなく、香りがほぼ全ての情報を持っているということです。しかし、苦くて口が渇いたり、酸味で唾が出てくるなど舌で感じる情報があるのも事実。試しに、コーヒーを舌の中心を速いスピードで流して飲む方法と、口全体に広げて飲む方法を試してみてください。感じる苦味や酸味の強度が違うことがわかります。
飲み口の形と酸化の関係
2017年のクロスカルチャー研究で、マグカップの形とコーヒーの風味の関係を調べたものがあります。この研究では、「カップの縁の大きさが味に影響する」という研究結果を発表しています。
参考:Does the shape of a cup influence coffee taste expectations? A cross-cultural, online study
- 縁が狭くなっているカップ→空気に触れる面積が少ないため、香り高くなる
- 縁が広くなっているカップ→空気に触れる面積が多く酸化が早いため、甘くなる
この結果は、コーヒーがどれだけ空気に触れているかということに関係しています。コーヒーもワインと同じく、空気と触れて酸化することによって、フルーツであるコーヒーの実の由来の香りと味から、華やかな香りや丸みを帯びた味わいに変化します。
縁が広がっているカップでは、空気に触れる面積が多く酸化が早いため、味に丸みが生まれ甘みが強調されます。逆に、縁が狭まっているカップでは、空気に触れる面積が少ないため、果実味や香りが保たれます。また、狭まっているカップはより香りを中に閉じ込めることができるため、香り高くなります。
参考:How Your Coffee Cup Makes Your Coffee Taste Better – Or Worse
カップの「厚さ」で変わる味わい
カップの縁の厚さが変わると「苦味/酸味」「重い口当たり/軽い口当たり」「単調な味/複雑な味」が変わります。
「厚い」カップ | 「苦味」「重い口当たり」「単調な味」が強調される |
「薄い」カップ | 「酸味」「軽い口当たり」「複雑な味」が強調される |
なぜ厚さで味か変わるかというと
- 厚いカップ→コーヒーの通る場所が制限され、よりどっしりとした苦味を感じる
- 薄いカップ→口全体に広がりやすいため、より多くの情報を感じ優しい味わいになる
主にこのような理由で感じる味わいが大きく変わってきます。
厚いカップの場合、唇の大半がカップに当たりカップの存在感が大きくなります。そして、唇との接触面積が大きくなることでコーヒーの通る面積が制限され、口の中の中心・上半分の部分を通ることになります。このため、コーヒーを塊として感じやすく「苦味」「重さ」「シンプルさ」が強調されます。
薄いカップの場合、厚みや存在をあまり感じさせないためコーヒーをより感じることが出来ます。薄いカップは、コーヒーと唇の接触面積を増やすことで、コーヒーが口の中に広がりやすくなります。そのため、コーヒーの広がりを感じやすく「酸味」「軽さ」「複雑さ」が強調されます。
カップの「素材」で変わる味わい
カップの素材が変わると「苦味/甘み」が変わることが分かっています。
陶器などの「ザラザラ」のカップ | 「苦味」が強調される |
磁器、ガラスなどの「ツルツル」のカップ | 「甘み」が強調される |
オックスフォード大学の心理学者/知覚研究者であるチャールズ・スペンス氏(1969-)は「カップの素材でコーヒーの味わいが変わる」という研究結果を発表しています。
実験では、被験者に表面が粗い陶器製カップと、表面が滑らかな陶器製カップが渡されました。被験者たちは、表面が粗いカップで出されたコーヒーのほうが、表面が滑らかなカップに比べて後味が苦く、甘さを感じにくいと評価が大多数でした。「表面が滑らかなカップで飲むコーヒーのほうが甘いと認識された」とスペンス氏は述べています。
参考:Food Quality and Preference
カップの「色」で変わる味わい
カップの色が変わると「風味の強弱」が変わることが分かっています。
マグカップなど蓋がない場合
コーヒーとカップの色の「コントラストが強い」 | 全体的な風味を「強く」感じる |
コーヒーとカップの色の「コントラストが弱い」 | 全体的な風味を「弱く」感じる |
持ち運び用カップなど蓋がある場合
カップの色が「暗い」 | 風味と香りが「強く」感じる |
カップの色が「明るい」 | 風味と香りが「弱く」感じる |
そしてカップの色の影響について考える場合、持ち帰りカップのように蓋があるのか、それともマグカップのように蓋がないのかの2パターン考えなければいけません。
というのも、カップの色が変わると味が変わるという様々な研究結果が出ていますが調べてみると
- 実験1
- 白などの明るい色のカップは、コーヒーの茶色がもっとも濃く見えるため「味を強く」感じる
- 実験2
- 明るい色はフルーツや甘さを連想させるためコーヒーが「甘く」感じる
という真逆に思える研究結果が出ています。
これはなぜなのか?研究内容を見てみると実験1では、蓋がないマグカップを利用しているためカップとコーヒーの色のコントラストによって味覚に影響が出るようです。実験2では色の違う缶を利用している実験のためコーヒーとカップのコントラストは関係なく、容器の色のみによってコーヒーの味に影響が出ていることがわかります。
このことから、マグカップのように蓋がなくコーヒーが見える場合はカップとのコントラストを意識する。そして、缶のように中身が見えない場合には明るい色の方が甘さが際立つということになります。
コントラストによる味の違い
【実験1】では、オーストラリアのフェデレーション大学と、チャールズ・スペンス教授らイギリスのオックスフォード大学の共同研究により、マグカップの色によって「味の濃さ」と「甘み」の感じ方が変わることが明らかになりました。実験内容は、「白、青、透明」のマグカップにそれぞれ全く同じコーヒーを注ぎ、被験者がそれらを飲んで「苦味、甘み、味の強さ」などを評価するというものです。
研究者たちはこの実験結果から、コーヒーの色とマグカップの色のコントラストによって味覚に影響が出ると考えました。コーヒーの茶色が、苦味の感覚に関与しており、白いカップに入れるとコーヒーの茶色がもっとも濃く見えるため、このような結果になったと考えられています。そのため、蓋がないカップの購入を考えている際は、こちらの研究結果と同じくカップとコーヒーの「コントラスト」を考えましょう。
〜スペンス教授らの研究結果〜
カップの色 | 味の濃さ | 甘さ |
---|---|---|
白いカップ | 強 | 弱 |
青いカップ | 中 | 強 |
透明なカップ | 弱 | 中 |
参考:Does the colour of the mug influence the taste of the coffee?
コーヒーに限らず料理で食器を選ぶ際、料理人の方達が気をつけていることがこのコントラスト。食材と食器の色の差が大きいほどコントラストが際立ち、メリハリの効いた状態になります。
容器の色による味の違い
【実験2】は、四つの缶にそれぞれ「茶、赤、青、黄」の色をつけ、その中に同じコーヒーを注ぎ、被験者が風味や芳香の感じ方に変化があるかどうかを回答するというものです。野村淳一(著)『色の秘密 色彩学入門』より。
こちらの実験では、コーヒーと容器のコントラストが見えないため、被験者はカップの色から影響を受けていることがわかります。そのため、持ち運びタイプの容器や蓋がついているカップを購入する際はこちらの研究結果と同じく色のイメージを考えましょう。
〜色彩学入門の研究結果〜
濃い赤 | 風味と香りが強すぎる |
明るい赤 | 風味と香りが濃い |
青 | 風味と香りが柔らかい |
黄色 | 風味と香りが弱い |
辛いものは辛さを感じる色(赤や黒)、甘いものは甘い色(黄色やピンク)をしていないと、その食品の美味しさや一番売りとなる味の特徴に対して感じる大きさが減少してしまいます。これは味覚色と呼ばれるもので、味覚の「らしさ」を色で表現しているものです。つまり私たちは食べ物を前にして、まず色で味に対しての期待を持ち、その上で食べることで、期待通りの味を感じ、美味しく感じたりもします。
このように色のイメージによって味が左右されるという結果になりました。
これは人間が食事をする時の五感の割合に大きく影響しています。
- 視覚→87%
- 聴覚→7%
- 触覚→3%
- 嗅覚→2%
- 味覚→1%
このように、視覚が87%はたらいているのに対し、味覚はなんと1%しかはたらいていないのです。そのため、カップの色から先入観を持ってしまい味に影響するというわけです。